旅3日目

6時ころに目覚める。
昨晩は真っ暗だったので屈斜路湖はよく見えなかったし、ホテルの部屋の窓から外を見ても、部屋の明かりが外の暗闇に反射して、鏡みたいになっていたので、景色は良く見れてなかった。

が。

朝目覚めて見た屈斜路湖は、もーーーーーーーーーー!もーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
でかい。圧巻。
屈斜路湖の有名な中島も、でかい。存分にでかい。
またもや早々にチェックアウトをして、一路阿寒湖へ。
阿寒湖は相方が一番行きたかったところ。マリモをどうしても見たかったそう。
阿寒湖畔にある駐車場に車を止め、町を抜けて船着場へ向かう。
その道程、各所に手湯という手洗い温泉のようなものがある。
全部に手をつける。
そのひとつが面白い形をしていたので写真撮影をすることにする。
持参した三脚を組み立てているときに、指を思いっきり挟んでしまい怪我をする。
苦悩する私の顔を見て、大爆笑している相方。
笑うな!いてーんだぞ!笑うな!といっても、なにかツボに入ったらしく爆笑している相方。
一生うらんでやる 笑
血でたし。
さっそく手湯で湯治を試みる。気持ち回復が早まった。

船着場に着く。マリモをみるには、湖の中ほどにある島に行かなくてはならず、フェリーでいくか、高いお金をはらってモーターボートを借りるかの選択。
スケジュールを考え、20分7千円のモーターボートに乗る。
阿寒岳をみたり、湖をみたり、その爽快な短い船旅を存分に楽しめた。すぐに島に着く。
中は簡単な周回コースがあり、それをたどりながらマリモの博物館みたいなところへいく。
大小さまざまなマリモがある。野球ボールほどのマリモに育つには、100年以上を要すると聞く。
バスケットボール級のマリモもあったので、なにか感動がこみ上げる。

昔はマリモの群生地もボートでいけたらしいが、国の天然記念物に指定されてから群生地にはいけなくなったらしい。
博物館には、群生地にセットされたライブカメラで見学することができる。

ボートの出発時間が迫ったので、急いで船着場に戻る。
相方は船着場近くのお土産屋で、マリモを購入。養殖のではあるが、独特のかわいさは、天然ものと違いはない。
球状の形態に育つモは、世界中でも阿寒湖だけだそうだ。

車にのり、再び屈斜路湖方面に移動、次は天下の名勝、摩周湖である。
霧の摩周湖、そう例えられるほど、晴天の摩周湖に出会うことは難しいそう。
私が立ち寄ったときは、霧はなかった。が、お天道様も顔を出していないので、ベストコンディションではないと、近くの常連観光客に聞く。
しかし、その紺碧に輝く湖は、むしろベストコンディションなのではないか、と思わせるほどの美しさ。
例えるならば、紺碧のゼリーの表面をつや消しにしたような、とても上品な、明らかにほかの湖とは違う風格のある湖。
感動に感動し、写真及び動画撮影をする。

晴天のベストコンディションだと、湖全体がエメラルドグリーンに輝くそう。透明度が高いから、湖底まで光が届くからだ。
そのベストコンディションではなかったのだが、湖畔の浅い部分は、うん確かにエメラルドグリーンに輝いている。これが湖全体になるのだとしたら、さぞや美しいのだろう。
摩周湖見学のためだけに、また北海道に来るとしても、それは十分な目的になるだろう。

また必ずここに来ることを心に決め、摩周湖を後にする。

次なる目的地は知床半島世界遺産に手がかかっている場所だ。
摩周湖から知床までは、またかなりある。スケジュールでは、本日中に知床半島観光まで済ませなければいけない。
そんなはやる気持ちを抑えきれず、ついついスピードを出す。

それが功を奏して、予定よりもかなり早く知床半島に到着。
目指すは知床半島中腹のウトロだ。

車は順調にオホーツク海を眺めながら進む。
まもなくウトロ、というところで、私の一番楽しみにしていた「オシンコシンの滝」に到着。
国道横にある無料パーキングに車を止めると、すぐその滝は見えた。
国道沿いスグのところにあるのだ。

小高い山の壁面をすべて使っているかのごとく、広い滝が流れ落ちてくる。実に美しい。
満足の滝だった。
ここもそうだが、北海道の車旅で思ったことがある。景色がいい、と思われる場所には、必ずといっていいほど無料パーキングがあるのだ。
なんという粋な計らい。100円でも取れば、今の北海道財政の助けになるだろうに。私なら喜んでそのお金は払う。

今晩の宿はウトロの「北こぶし」という旅館。
恐らくウトロ最大の旅館ではないか。
知床観光前に、チェックインをしてしまうことにする。
上品な接待は、車の移動から荷物の上げ下げ、ウェルカムサービスのミントの香りのおしぼりは、好感。
荷物を部屋に下ろし、一休み。相方はいつもチェックイン後にお茶を入れてくれた。ありがたい。

15時ごろか、一気に知床観光をしてしまおうと、旅館を飛び出す。
ウトロから北東に路をとる。これが後ほど、大変なスリリングなドライブになるとは、二人とも知る由もなかった・・・ナンチテ。

車で北上するとすぐのところに、ウトロの港町を一望できる丘があった。撮影撮影。
目的地は、北上しつづけたところにある大橋。相方が行きたがっていた。もうひとつは知床五胡。そのために車を走らす。
途中エゾシカが悠然と、そして大量にいた。群れを成している。
メスジカとコジカは、車に気づくと一斉にこちらを警戒した様子で逃げながら睨む。
角の立派なオスジカは違う。ノッシノッシといった具合に、車のライトにもおびえず、目の前を横断していく。
このとき気づいたのだが、道中各所に「動物飛び出し注意」の標識があったのだが、このように動物が大量にいるところには、その標識はなかった。
みりゃわかるべ、と言わん如く。

20分ほど北上すると、知床五胡はあった。有料パーキングに停める。
周回コースがあるのだが、五胡すべてをめぐるには90分かかるらしい。
日が傾いていたので、最短の第1湖のみを見るコースを取る。

周回コーススタート地点に気になる警告が。ヒグマ注意・・・。
クマーーーーーー!!!

それがただの脅しではなく、いよいよ本格的なのだ。
スタート地点にある売店には、熊よけ鈴も売っていた。
10分ほど草葉の物音にビクビクしながら歩みを進める。
湖到着。水面鏡のごとく綺麗に空を映し出す。

この道中では数々の湖をみたが、どれをとっても独特の特徴を持ち、飽きることはなかった。

背後におびえ、気持ち小走りになりながらパーキングに逃げ帰る。
残るは橋を見に行くのみ。言うはやすし。。。である。

湖を後に車を進めると、すぐにアスファルト舗装がなくなる。カーナビを見ても道は途絶えている。
が、この先なのだ。橋は。
ガタガタガタガタと道を進み続ける。日はどんどん傾く。ガタガタガタ。
ガタガタガタ。ガタガタガタ。ガタガタガタ。ガタガタガタ。

どれくらい走っただろう、ゴールなんて無いのではないかと思い始めた頃、丘に出る。
感動の風景だった。知床半島からオホーツク海を一望できる丘なのだが、日はもう完全に沈もうか、という頃。
赤といわずオレンジといわず、紫ともいえない自然の作り出したマーブル模様。
海はかすかにガスがかかっている。吸い込まれるような日没。
夕日を見るためには邪魔なずの雲まで、この絵画では主役になる。奥行きを表現するための主役だ。
ため息の出るような、、、という表現は本当にあるのだ。涙すら出そうだった。

そこまでの悪路を忘れ、それを引き返す後の苦労も忘れ、ただただ沈む太陽に付き合う。その時間を太陽と共有する。
自然と一体になる。
時間にしてほんの5分くらいのドラマだったのではないか。
この道程は今の景色を見るがために、この5分のドラマに出演させてくれるために、神様が導いたのではないかと思えた。

日がすっかり落ちて、明日までの別れを告げ、橋に向かう。
興奮冷めやらぬ車中。意外にも橋は近かった。

橋自体は、なんてことはない、鉄橋だった。
人が作った鉄橋なんかより、自然がくれた5分のドラマが完全に食った。

行ききた悪路をガタガタ帰るのだが、相方は先ほどの感動がすっかり引き、ただただおびえていた。
真っ暗な山道。舗装はない。ガードレールもない。カーブが幾重にも続く。
私の中では先ほどの感動が、ずっと頭の中にあった。それゆえか、行きよりもルンルンであった。
鼻歌交じりに車を走らせていると、車の前になにかいる!
明らかにエゾシカではない。

よくよく見ると、キタキツネである。本当にここは北海道なんだ、と改めて実感させる出会いだった。
相方はキタキツネを見たのが始めてで、とても興奮していた。後に聞くと、キタキツネにあえたのが一番うれしかったそう。

程なくアスファルトの道に帰ってくることができた。そのまま一気に旅館へ。
食事→温泉→就寝

一番濃密な日であった。