追悼トラ

トラ近影

私が高校2年の頃からいた。
我が家にきた頃は生まれたばかりで、歩くことよりも、ピョンビョン跳ねて移動するくらい元気な猫だった。
誰からも愛される顔、性格、上等なマフラーになりそうな毛並み。

あれから10余年。
トラは今日、天に召された。本当に突然のことだった。

過去に二度、やはり愛猫の死を経験している。
悲しいことだが、その死の悲しみは、どんどんと記憶から消えていく。
でも今回は違う。そのために日記に書き記す。

昨年の今頃か、我が家のはす向かいに某企業の独身寮が建設されていた。
まだ鉄筋とコンクリートの打ちっ放しの状態。
雪でも降り出しそうな寒い夜だった。
室内猫のトラが、玄関から飛び出してしまった。

トラは猫としての運動能力を全く持っていない。ドジで怖がりで、晩年まで掃除機におびえていた。
そんな猫が、まだ建設中の建物の4階にあがってしまったのだ。
ドジだから降りてこれず、泣き叫ぶばかりのトラ。そのまま朝までは寒さで耐えられないと思った。

建築現場なので、建物全体を布で覆われていて、入り込むことは困難だった。
しかし極寒の夜だったので、私はその四階まで駆け上り、トラを救出した。
あまりにドジで、世話が焼ける。それだけに思い入れは強まっていた。

あれから1年後、まさかこんな死を迎えるとは。
でもこれは事実なんだ。
あいつはどこまでもマヌケで、どこまでもカワイイやつだった。

これは私の記憶であり、トラの死という事実そのものだ。
悲しい。しかし、この悲しさを思い出せなくなることは、もっと悲しいことだ。
私はここに書き記すことにより、後年も悲しむことができる。

トラの冥福を祈って。
本日はこの記事だけとします。