金曜日の話。
この日の日記にも書いているように、大遅刻をした。
そんなこともあり、仕事は23時まで。
ここのところ急に頭をもたげてきた「スキー熱」がこの日も再燃をはじめる。
人生で一度しか滑ったことが無いくせに、である。
しかも7年前、である。
我が家から比較的近いところに「狭山スキー場」がある。
シーズン中だと、金曜日・土曜日に「オールナイト」営業をしている。
23時から6時まで滑り放題というプラン。
時間もちょうど良い、というわけで行くことに決める。
さて職場を23時に出発し、御茶ノ水→池袋→西所沢までいく。ここから西武球場前まで出ている電車がある。
のだが、すでに終電は行ってしまっていた。
不本意だけれども、西所沢についた段階で、私の退路は断たれている。戻るための電車はすでに終了していたのだ。
こうなったら、やけのやんぱち、行くしかない。そしてそれは同時に、朝6時の始発まで拘束されることをも意味している。
西所沢で電車を諦めた私は、タクシーを拾う。
西所沢から一駅分だし、たいしたことないと高をくくっていた。
しかし。
深夜料金もさることながら、なんせ距離がある!!
1800円も行ってしまう。電車だったら140円やそこらの距離を、である。
軽く肩を落とすも、もうしかたない。こうなる運命なのだ。
程なくして狭山スキー場に到着する。
駐車場には驚くほど車があり、活況の度合いが手に取るようにわかる。
その頃既に23時40分くらい。アホの集まりだと確信する。
スキー場に到着するや、とりあえず今シーズンはまた来るだろうと思い、お得な会員制度に入会する。1500円なり。
オールナイトチケット購入。3500円なり。
スキー一式を借りる。2000円なり。
高くね!?
ま、しかたない。
さてロッカーを確保(300円なり)して着替え完了。
というか、ブーツの履き方すらわからない私は、この作業で果てしなく時間を浪費する。
また、板にどうやって足をはめるのかも、ロッカーの物陰でコソコソとリハーサルをする。
その後はずす練習をするのだが、ブーツが脱げなくなり、本気であせる。
一通りのリハを終え、いざゲレンデへ。
雪ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
なんかチャッチーーーーーーーーーーーー。
人多っ!!
雪の冷たさではない。周りの和気あいあい具合が私の心をヒューーッと冷たくしていく。
孤独感。虚無感。
得もいえぬ敗北感。
オールナイトに参加する人たちは「われこそは!」と言い出しそうな猛者ぞろい(に見える)。
腕に自信がある人ばかり。ピューイやらクルクルーやら、ジャーーンプやら、さも楽しそうに、そしてご機嫌に滑っている。
ますます私の心に、寒風吹きすさぶ。
そもそもいろいろと間違っているのだ。
初心者が、それも1人で、それもオールナイトに参加。
間違いだらけのスキー選びである。
本気で帰ろうかと思ったが、西所沢からスキー場までだけで1800円も取られたのだ。
スキー場から我が家までタクシーに乗るとしたら、うん破産だ。
退路は断たれている!これは背水の陣である!!
否!もはや四面楚歌ですらある!!
わしが男塾塾長江田島平八で バカ。
そんなわけである意味の開き直りが私の心に生じた。
何はともあれ、雪に乗ってみようと。
板を小脇に抱えたまま、雪に・・・ ズル。
ブーツですらコケタ!!!
すべる目的ではないはずの、ブーツでこけた!!!!
帰る!!!
退路なし!!!!
肩落とすほかなし。
そう。落とすほかナシである。
リフトなど100万年早い。
初心者用の登坂道をテクテク登る。肩落として登る。
周りの歓声が、すべて私をあざ笑っているかのように聞える。
登りきる。
7年前を思い出すんだ!7年前も沢山転んで、そうやってそれなりに滑られるようになったじゃないか!
こけるを恥らうな!!
いや、無理ですよ 笑
だって7年前は友達五人と行った訳で、こけたときにその友達の方みて「デッヘヘ」とか言えば、なんとかなったもん。
今1人だもん 笑
なんて葛藤をしばらくする。
またブーツのみで雪に乗ってみることに。
ズル!
コエーーーーーーーーーーー。
雪とかいって、コーーエーーーーーーーーー。
もう、すぐに登坂道に戻り、いろんな人の動きをマジマジと眺める。
雪コエー、けどナントカしないとなあ。
時は無常にも過ぎ去るもの。
そうこうして、なんと40分経過した。
その登坂道には、何度も何度も同じ人が滑っては登り、登っては滑ることを繰り返している。
「まだいるのかこの人」とか絶対に思われている。
いや、逆に目立つのだ。すごく。真っ黄色だし。
こういう境地に陥ると、人間って仲間を必至に探し出すんね。
私のような初心者が1人はいるはずだ!
あちこち探す。必至で。そりゃもう命がけで。
居た 笑
赤いの居た 笑
赤くて恥ずかしいの居た 笑
初心者キターーーーーーーーーーーー。
ヤツは三人組の1人。
他二人はかなりの腕前の様子。
でも赤は明らかに私と同程度なのである。
これである種のネガティブ勇気をゲットした私は、勇気を振り絞り雪上へ。
ハの字に板を置き、ガツッガツッとブーツをはめる。
確かによろめいたのだが、ストックで異常なまでに力及び体重をかけ、堪える。
たった。月面上陸した宇宙飛行士のような表情で、胸を張る。立てたぞーーーーーーーー。
すぐに、こけたぞーーーーーーーーーーーーーー。派手に。
明らかに不自然なこけ方をする。
内臓が「ブチッ」て音を立てた。本当だよ!
明らかに致命傷の音。
後日談としては、別に死んでないけど、妙な打身は残った。
さてなんとか起き上がり、滑走開始。
すべりはじめると、7年前の経験が沸々とよみがえってくる。
滑れた!!
その頃には既に3時を回っていた。
三回ばかり滑走したら、もうヘトヘトになっていたので、喫煙所にて休憩をする。
タバコを吸い、スポーツドリンクを飲み干す。
そのときふと赤が目に入る。
どうも赤も私を意識しているようだ。
だって、明らかに人里はなれたベンチに私1人くつろいでいたら、隣にきたもん!
話しかけられそうだったけど、逃げた。
かくかくしかじかあって、へっぴり腰ながらも、ある程度は滑走できるようになる。
気づくと5時を回っていたので、帰り支度開始。
赤よりはうまくなったからイイ。
そして朝6時半くらいに自宅到着。
そんな日だった。おもしろかった。
周りの目なんか無視!
あれから二日たったけど、体の節々がまだ痛む。
今シーズンはスキーだ!