日本国憲法について
先日id:fmtr氏と、id:kennjiu氏の受験勉強のために「名文」を探していた。
漢字や文章の読解能力を高めるために。
そこでif:fmtr氏が青空文庫はどうか、と提案してきた。
ここは著作権が切れている、もしくははじめから著作権を放棄している文書が沢山登録されているサイト。
森鴎外やら、私の好きな種田山頭火やら、夏目漱石やらたくさん登録されている。
そこでif:fmtr氏が何気なく見つけた文書に、私は大変興味を示した。
著作者が「文部省」となっているもの。
「あたらしい憲法のはなし(http://www.aozora.gr.jp/cards/001128/card43037.html)」という文書がそれだ。
初版発行日こそ1972年となっているが、「底本の親本」の初版発効日は1947年。昭和22年(我が母の生まれた年!)である。
この文書をHTMLですぐに読むことができる。http://www.aozora.gr.jp/cards/001128/files/43037_15804.html
この文章の対象年齢(学年)は明記していないが、内容を見ると小学生が対象になっていると捕らえて間違いないだろう。
ちょっとした言葉も平仮名で書いてあるからだ。
内容は、第二次世界大戦での大敗をキッカケに、大日本帝国憲法から日本国憲法に変わる際に、大きな特徴を抜粋して非常に詳しく書いてある。
興味深い解説として、「六 戰爭の放棄」があげられる。
いわゆる日本国憲法第九条に関する、文部省の解釈が書いてある。
極めて興味深い文を引用すると
そこでこんどの憲法では、日本の國が、けっして二度と戰爭をしないように、二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戰爭をするためのものは、いっさいもたないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戰力の放棄といいます。「放棄」とは「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの國よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。
現在の第九条解釈とは明らかに乖離した、原文を極めて額面的に捕らえた解釈となっている。
この解釈から考えると、自衛隊ももちろん違憲となる。
誤解がないように敢えて説明させていただきたいが、私は思想的にいわゆる「右寄り」思想主義者だ。
だから、というわけでもないが、自衛隊は合憲だと思いたいし、今回のイラク人道支援派遣は大いに評価している。
ところが、そんな私でもやはり日本国憲法を「解釈」で運用するのには、もはや限界がきていると思う。
戦争の放棄は強く堅持していくべきだし、現在の日本国憲法は世界に胸を張れる、本当に類まれな憲法だと思う。この憲法がもたらした功績は本当に大きなものがあると思う。
が、しかし、である。
やはり60年の月日は短い歴史ではない。世界は大きく動き続けている。
そういった意味で、今日憲法改正議論が沸きあがっていることは、当然の流れであるし大いに議論してほしい。
さて先の文章に話を戻す。
もうひとつ私がこれを読んで強く感じたこと。
小学生相手にキチンと真正面から憲法の説明をしていることだ。
現在では憲法の勉強をするのは中学校からだ(もしかして最近は違うのかも・・・)。少なくとも私はそうだった。
憲法は国の最高法規であり、国民として詳しく理解する必要は当然ある。
この文章は大変名文であると思うし、子供でも理解は苦しくないと思う。
また最近の大人でも、改めてこの文章を読めば、あの堅苦しい日本国憲法の原文を読むよりもはるかに得るものが大きい。
とにかく一度、ぜひ読んでいただきたい。